スローフードを知るためのQ&A

Q1.まず「スローフード」という言葉の由来は?
Q2.「スローフード協会」はいつ発足を?
Q3.「スローフード協会」はどのように運営を?
Q4.「スローフード協会」は世界中にあるのですか?
Q5.協会の成長ぶりは、スローではなかった?
Q6.イタリアの「スローフード協会」本部は主にどんな活動を?
Q7.どんな出版物がありますか?
Q8.出版以外はどんな活動を?
Q9.試食のためになぜ「会食」をする必要が?
Q10.「ゆっくり食べる」ことが目的ですか?
Q11.「食について語り合う会」ということ?
Q12.つまり「イタリア料理」の話ではないんですね?
Q13.どんな食べ物をと呼ぶのですか?
Q14.つまり「量産品はだめ」ということですか?
Q15.もっと昔の生活に立ち戻るべきだと?
Q16.スローフードの敵はファストフードですか?
Q17.ファストライフとは、具体的にどんな生活のことですか?
Q18.やはりファストフードも食べてはいけない?
Q19.「スローフード運動」は具体的にどんなことを目指しているのですか?
Q20.郷土料理や質の良い食品を守るための活動は?
Q21.「味の教育」とは、具体的にどんなことを?
Q22.それはどんな内容ですか?
Q23.目的はやはり味覚の体験?
Q24.ほかにもそんな機会はありますか?
Q25.そのほかにイベントはありますか?
Q26.スローフード運動は社会の在り方を変えていくことですか?
Q27.気楽に構えることが必要なんですね?
Q28.どうすれば私たちもスローフード運動に参加できますか?
スローフードとは
1986年、イタリアの小さな町で生れた「スローフード」は効率ばかりを追い求めた生活を見直し、風土に根ざした食べ物を大切にし、その生産者を守ろうとするものです。スローフードの運動には、大きな3つの方針があります。1つ目は、昔からある食文化を守ること。つまり、その土地で昔から伝わっている伝統的な料理や食材を、次の時代の人たちに伝えていくことです。2つ目に、大量生産の安い品物が登場してきたことで、昔からある、おいしくてすばらしい食の材料が姿を消していってしまわないように、価値ある野菜、豆類、穀類、動物や食品を指定して、それらを保護して残していくことです。そして3つ目は、小さな時から、味や香り、栄養について感覚を育てられるように、子ども達に「味覚」の教育を行うことです。
 スローフードとよく似た考え方は、日本にもあります。「地産地消」という言葉を聞いたことは無いでしょうか。地産地消とは「地域生産・地域消費」を略したものです。その土地や地域に生まれ育ち、生活する人々は、地元で取れた産物を食べて、健康的な生活をおくるという考えです。
 同じような意味の、「身土不二(自分の住んでいる土地で取れるものを食べるのが身体によい)」と云う言葉もあります。なぜ最近、や地産地消といったことが言われるようになったのでしょうか。それは、歴史の流れから見ても、現在の食生活は異常とも言える速さで加工食品が溢れ、生産者や食品の製法が見えないものを食べているという危機感の現われかと想われます。
 「便利・安い・製品の画一化」等が、ファーストフードをつくりました。江戸時代にも屋台で食品がファーストフードのようにお売られますが、素材も製品も手作りで、現在のファーストフードとは、製品の画一化という部分が全く違います。現在の残留農薬や食品添加物のような心配などは、全く考えられていませんでした。食材が新鮮かどうかだけを気をつければ、安心して口にすることができました。せっかちな江戸の人々のファーストフードは、現在のように工場で大量生産されたものでもなく、食材の流通経路も単純でした。なにより、江戸のファーストフードは、日常の食べ物ではなく「晴れの日」の食べ物だったのです。江戸のファーストフードと現在のファーストフードの違いは、ここにあります。
 過去の人々が大切にしてきた、人々とのコミュニケーションと食事の素材に注目して、生活を楽しく、健康におくる事が幸せなのだと、今改めて、気がついたということではないでしょうか。
 環境と、この2本の柱が、八戸屋台村「みろく横丁」のコンセプトであり、この根底にあるのが、地域循環型社会の実現であると確信しております。

Q1.まず「スローフード」という言葉の由来は?
約15年前、ローマにマクドナルドのイタリア1号店が誕生して、これをめぐる騒動がマスコミでとりだたされていたころ、のちにスローフード協会の会長となるカルロ・ペトリーニが仲間たちと食卓を囲んでいたとき、ファストフードの脅威という問題が話題にのぼり、だれからともなく「スローフード」という言葉を口にしたのが始まりです。

Q2.「スローフード協会」はいつ発足を?
1986年、イタリア北部のペトリーニ会長の故郷、ビエモンテ州ブラに発足しました。母体となったのはアルテ(ARCI=Associazione Ricreativa Culturale Italianaイタリア余暇・文化協会)で、この協会の一派としてアルチゴーラの名前で発足したのが最初です。その後協会に名称を変え、世界的組織となった今も、その小さな村に国際本部があります。

Q3.「スローフード協会」はどのように運営を?
基本的にNPO(非営利団体)でいわば食文化のボランティア団体。イタリアでは、全国の会員が支払う会費(1人7万リラ=約5000円)や、公共・私的機関の寄付金、また出版物の売上などによって、運営費や団体職員の人件費をまかなっています。

Q4.「スローフード協会」は世界中にあるのですか?
イタリア本部を中心にコンビビウム(Convivium)と呼ばれる支部が世界中に広がっています。イタリア国内にあるコンビビウムの数は約340。2001年には日本も含め、フランス、ドイツ、スペイン、アメリカ、フィンランド、ブラジル、そして東欧諸国にまで世界45か国、あわせて約6万5000人の会員をもつ一大組織に急成長しています。イタリア以外の国にあるコンビビウムの数は約220で、日本には2004年2月現在31つのコンビビウムがあります。

Q5.スローフード協会の成長ぶりは、スローではなかった?
89年の会員数は約7000人ですから、10年あまりで約10倍。ペトリーニ会長はじめ協会の幹部は、年中飛行機で国内外を飛び回りながら、なんとかその速度をスローにできないか、頭を悩ませているようです。

Q6.イタリアの「スローフード協会」本部は主にどんな活動を?
スローフード協会はまず消費者に正しい情報を伝えるという見地から、出版活動を重視しています。

Q7.どんな出版物がありますか?
世界中の会員に送られる季刊誌「スロー」、「スローワイン」のほか発足3年目に出版された「オステリア・ガイド」は、食べ物の質・安全性・経済性という3つのポイントに立脚し、イタリア各地の地元会員がチェック。ワインやお菓子のガイドブックとともに高く評価されています。その他にも数多くの書籍やガイドを出版しています。

Q8.出版以外はどんな活動を?
後述する「スローフード・アワード」、「サロネ・デル・グスト」、「味の箱船とプレシディア」、「味の週間」など多彩な活動を行っています。しかし各支部(コンビビウム)での核となる活動は試食のための会食です。イタリアでは国内の340の支部がそれぞれ月に1度の割合で、オリーブ油やワイン、チーズなどのテイスティングを行います。

Q9.試食のためになぜ「会食」をする必要が?
協会は質の良い食べ物を守ることだけでなく、「共に食べる」ことを大事にしています。職業も暮らしぶりも異なる人間同士が、月に1度、顔をつきあわせて食事をし、大いに語りあう。この一見、当たり前の営みこそが、運動の核になっているのです。

Q10.「ゆっくり食べる」ことが目的ですか?
スローの意味はだらだらと、やたらと時間をかけて食べよう、ということではありません。ふだん漠然と口に運んでいるものを、ここいらで一度じっくり見つめてはどうか、というのがの提案です。

Q11.「食について語り合う会」ということ?
商業主義的な、いわゆる「グルメの集まり」ではありません。毎日、私たちが胃の中におさめている滋養と活力の素を通じて、自分と身のまわりの人間や、自分と自然との関係を問い直そうではないか。とは、そんな人生哲学のすすめです。

Q12.つまり「イタリア料理」の話ではないんですね?
日本人には「スローフード」=「イタリア料理」のイメージがあるようですが、そうではありません。イタリアにはイタリアの、日本には日本の固有ながあり、生き方があります。イタリア料理を食べてワインを飲めばあなたもスローフーダー、ということではないのです。

Q13.どんな食べ物をと呼ぶのですか?
ペトリーニ会長は守るべきの典型として、4つのポイントを挙げています。
1つめは、その土地の産物であること。
2つめは、素材の質の良さ。
3つめは、その土地の風習にあった生産法。
4つめは、その土地に活気を与え、郷土の社会性を高める食品であること。

Q14.つまり「量産品はだめ」ということですか?
工場生産が悪だとは言いません。量産品にもいいものはあります。しかし、時代の速度についていけず、瀕死の状態にあるはもっとたくさんある。そういう食品や生産者を守っていくことが、運動の大きな意義のひとつです。

Q15.もっと昔の生活に立ち戻るべきだと?
便利な文明の力をなにもかも捨て去り、太古の人類のごとく、獲物をその手で射止め、粉は石臼で挽け、と言っているわけでもありません。世界的な食品の量産、均質化の大洪水から、失われつつある質のよい食品を守りましょう、と。「基本的には伝統主義だが、より知的に進歩していきたい」ということです。

Q16.スローフードの敵はファストフードですか?
スローフード運動はたんに「ファストフード反対」という、了見の狭いところに留まりません。スローフーダーの真の敵は「スピードに束縛され、そして、我々の慣習を狂わせ、家庭のプライバシーまで侵害し、「ファストフード」を食することを強いる「ファストライフ」という共通のウィルス」です。

Q17.ファストライフとは、具体的にどんな生活のことですか?
協会の会員で、社会学者のマッシモ・モンタナーリの言葉を借りれば、「選ぶことなく、評価もせず、理解しようともしない。食べ物に対して、まったく注意を払うことなく、それを考えもなく口に運ぶ」ことです。

Q18.やはりファストフードも食べてはいけない?
そんな規制はしません。逆にスローライフの奴隷になってしまうのも違う。これはいけない、あれはいけないと目くじら立ててばかりいては、せっかくの食事が台なしです。食卓は喜びの場であることを、まず大事にすべきではないでしょうか。

Q19.「スローフード運動」は具体的にどんなことを目指しているのですか?
スローフード運動の柱の1つは、消えつつある郷土料理や質の良い食品を守ること。
2つめは、質の良い素材を提供してくれる小生産者を守っていくこと。
3つめは、子供たちを含めた消費者全体に、味の教育を進めていくことです。

Q20.郷土料理や質の良い食品を守るための活動は?
スローフード協会では「味の箱船とプレシディア」といって、各地に伝わる食材や技術などを保護する評議会をつくり、その運動をサポートするという活動を行っています。また試食会などでと認められた食材を2年に1度、一堂に集めたプロモーション、「サロネ・デル・グスト」を開催しています。

Q21.「味の教育」とは、具体的にどんなことを?
まずひとつ、93年からスローフード協会では、毎年夏の1週間を「味の週間」と呼び、ふだんはお金もなく立ち食いのピッツァやハンバーガーばかり食べている若者に、一流店の味を安く満喫できる機会を作っています。

Q22.それはどんな内容ですか?
国や地方によって内容は異なりますが、例えばイタリアでは全国の有名レストランに働きかけて、25歳以下の若者ならだれでも破格の値段で、グラスワイン付きの食事を楽しめるように協力してもらっています。年齢が証明できれば外国人でも参加でき、ふだんは最低1万円するコース料理が、約3000〜5000円で食べられます。

Q23.目的はやはり味覚の体験?
もちろんそうです。近頃は、素材や鮮度の良さばかり強調されがちですが、それぞれの料理には、真のプロにしか出せない味、人類の長い歴史が横たわっていることを、頭ではなく身体でわかってもらうためです。

Q24.ほかにもそんな機会はありますか?
「味の週間」のもうひとつの試みとして、小学校や中学校に働きかけて、学校へユニークな食の教師たちを送り込む、というプロジェクトがあります。また2003年には本部のあるブラに「ヨーロッパ・テイスト・アカデミー」を設立する予定です。

Q25.そのほかにイベントはありますか?
1年に1回、食品や環境にかかわる活動で多大な貢献があったと認定された個人に対し、「スローフード・アワード」を授与しています。

Q26.スローフード運動は社会の在り方を変えていくことですか?
大きな意味ではそうです。でも大切なのは、ひとりひとりがを楽しむ気持ちのゆとりを持つこと。会員証などなくても、宣言は、今日この時にもできるものです。

Q27.気楽に構えることが必要なんですね?
宣言文を書いた詩人ボルナーリはこう言っていました。「スローフード運動は、人類の崇高な遊び心に支えられるべきなんだ。遊び心を宗教に変えてはいかん。宗教ならもうある。資本主義とか、もう2000年も生きのびてきたやつがな」

Q28.どうすれば私たちもスローフード運動に参加できますか?
前述したように個人で実施されても結構。スローフード協会に参加を希望する場合、お近くの支部(コンビビウム)に入会するか、また自分で支部を立ちあげ、イタリア本部に登録することも可能です。